時間:10時30分~
礼拝当日、10時30分より
■シモンの述懐 ①
あの日、いつものように網を打ってたら、突然あの人から声をかけられたんや。そもそも話したのは初めてで。でも、あの人が大工のヨセフのところの長男てことは知ってて。それと、弟や妹たちとは父親が違うのもここらの誰もが知ってる話でな。誰かが「マリアが聖霊によって身籠って生まれた子」といってバカにしたから、それから俺たちはあの人のことを「神の子」て呼ぶようになって。
そんなんやから、あの人は父親や兄弟と折り合いが悪くて、長男やのに家業も手伝わんと、ずっと湖の畔をブラブラしてた。俺とあの人は同い年で、俺たちは15くらいの時にはもう一人前に船に乗って魚を獲ってたけど、そのころからあの人は独りで、朝から晩まで、ときには焚火しながら一晩中ここにいた。家に帰っても居場所がなかったんやろな。どこに行っても「神の子や」てヒソヒソ言われて指さされるしな。きっと湖の畔が一番ほっとできる場所やったんやと思うわ。
■シモンの述懐 ②
俺が30歳になった年に、あの人が突然バプテスマのヨハネていうこれまた変わり者に弟子入りして、川の中に沈められる儀式を受けたらしいねん。その噂をきいて、俺は弟のアンデレや、ゼベダイの親父のとこのヤコブやヨハネと、「あの神の子に何が起きたんや?どないなったんや?」て噂しとったんよ。その矢先の、あの日、あの人が突然現れて、「俺についてこい。人間を獲る漁師にしたる」ていいよったんよ。
え?今まで見たことあるけど喋ったことのない奴に突然「ついてこい」て言われて、何でホイホイついていったんや、てか?
それはな、あの人が、俺らをまっすぐ見てくれたからや。俺らは決められた時間
に礼拝することもでけへんやん。安息日でも関係なく獲れるときに魚を獲るやん。
俺らは読み書きもでけへんし、貧しいし汚いし臭いし。そんなんやから、街に出ても誰も俺らをまっすぐ見てくれへん。俺らなんかそこに居てへんような扱いをしよるやろ?
そんな俺らをな。あの人は、まっすぐ見たんや。まっすぐ見てくれたんや。まっ
すぐ見て声をかけてくれたんや。俺な、あの時、「ああ生まれてきてよかった」て思えてん。「ああ生きててよかった」て思えてん。そんなことを思わせてくれた人が「俺についてこい」ていうてくれたんやで!そりゃ一緒に行こう!てなるやろ?!