聖書箇所:使徒言行録7章54節~8章1節
やもめへの配慮をめぐってギリシア語を話すユダヤ人キリスト者から提起された問題に際し選ばれた7人の使徒。その使命は初代教会に生じた分裂を、聖霊の力において癒し和解へと導く働きだった。特にステファノは恵みと力に満ち「すばらしい不思議なわざとしるし」ゆえに際立つものの、煽動された民衆、律法学者や長老に捕縛されてエルサレムの最高法院に訴えられ、本来の働きができないまま拘束される。しかし告発の場に引き出されたステファノの表情は「さながら天使の顔のように見えた」とある。この「天使のように見えた」という言葉から、ステファノの新たな使命が分かる。天使とはいわば主のメッセンジャー。その内容がステファノの最高法院での申し開きとしての説教となる。ステファノは最高法院を恐れずにイスラエルの民の神への離反を指摘した。
その結果待ち受けていたのは人々の暴力。民の憤怒とは対照的に、ステファノは聖霊に満たされ、天を見つめ神とイエス・キリストを仰ぐ。ステファノは神の真実に立ち、あるがままのメッセージを語った。耳を塞ぐ人々は彼を引きずり出し、古代ユダヤ教の死刑である石打刑を執行する。ステファノは「主よ、この罪を彼らに負わせないでください」と叫び、眠りについた。ステファノの使徒としての役割は完成された。
そして分裂した教会を和解に導くというステファノの使命は、その殺害に賛成していたファリサイ派の若者サウロに継承される。神の選びは人の思いを超える。そしてその人ならではの固有の役割を備える。サウロは後にパウロと名乗り使徒として活躍する。パウロは『ガラテヤの信徒への手紙』で「わたしは、イエスの焼き印を身に受けているのです」と記す。ギリシア語で「焼き印」とはスティグマータ。本来は奴隷や犯罪者の帯びる入れ墨などのしるしを意味する。主イエスの奴隷となることを通じて、この世の様々な権力や抑圧、情念からの解放と自由を、パウロは神から授かる。ステファノがあらゆる恐怖から自由であったように。人はこの道に導かれ、主にあって齢を積み重ねる。
今朝の礼拝では長寿感謝式を行う。イエスの焼き印を通して、齢を重ねることで賜物として与えられる伸び代に気づかされる。サウロは教会を数多く迫害する。その中で彼は使徒となる。聖霊の働きの中で齢を積み重ねたい。